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KAWASAKI W650
Classic Custom
ひと昔前、雨の日も風の日も槍の日も──そんなフレーズが似合う社用車として活躍していたのが、このW650。単なる“ビジネスバイク”に留まらず、高速道路を走れることを想定して設計された実用的でストイックなカスタムです。撮影時点で完成から約10年が経過しており、写真には錆や汚れが随所に見られます。でもそれらも、このバイクの“履歴書”のようなもの。決して作り置きではない、毎日走っていた実働マシンだからこそ滲むリアルな魅力があります。クラシックとミリタリーが融合したスタイルの中に、日々使われてきた信頼性と、無骨さに宿る色気が見え隠れする──そんな一台です。
クラシックスタイルの象徴とも言える砲弾型ヘッドライトは、マーシャル製イエローガラスレンズによって雰囲気が一気にヴィンテージへと引き寄せられます。見る人の目を惹きつけるだけでなく、黄色レンズが雨天時の視認性にも貢献。ヘッドライトステーには、ノーマルウインカー土台を板金で成形・溶接し、スムージング加工を施すという地味ながら手間のかかる工程を経て仕上げています。メインキーもタンク下へ移設し、視界の中に“キー”が映り込まない、潔いハンドル周りを構築。一見何気ないこの構図の中に、クラシックへの憧れと実用性への配慮が凝縮された職人技が宿っています。
クラシックな造形のトップブリッジにはエストレヤカスタムの純正部品を流用。これだけで視覚的な印象が一気に“レトロ”に傾きます。ハンドルはヤマハMT-25用でライズを抑え、力の入れやすさと乗り味を両立。狭いハンドル幅を解消するために、アルミから削り出してバーエンドをワンオフ作製。これはただの装飾ではなく、ウェイト効果により走行中の不快な振動を軽減する機能性も兼ね備えています。視覚的なクラシック感と実用性の両立──それがこのハンドル周りの哲学です。
リアキャリアはビジネスバイクの代表とも言えるスーパーカブ用を使用。ただし、W650にそのまま付くはずもないので、ステー類をすべてワンオフで作り直し、“キャリアはボルトオンで取り付け可能”という理想の状態へと昇華させました。実用性と遊び心が見事に融合し、「積んで走れるクラシックバイク」を目指す方向性がはっきりと表れたポイントです。作業着と工具箱が似合うバイク──そんな一面もこのキャリアから感じられます。
ウインカーには
motogadget mo.blaze tens1
を採用。このサイズでECE50R承認という高性能設計で、車検対応かつ圧倒的な小型感を両立した逸品です。マウントにはHiGHSiDER CNC削り出しブラケットをベースに、角を丸めてクラシック寄りの印象に整形。エッジの効いた現代パーツを、レトロマシンに自然と馴染ませる“温故知新”のカスタムがここにあります。
メインキーの移設により純正のハンドルロックが使えなくなった──そう聞いて「仕方ない」で終わらせないのがこのカスタムの真髄。フレームとロアステムにプレートを溶接し、新たにハンドルロック機構を追加。セキュリティ面の抜かりなさはもちろん、「細部まで自分仕様に仕上げる」という意志が伝わってきます。鍵ひとつに対しても妥協なく向き合う、その姿勢こそがクラシックカスタムの美学です。
ノーマルシートをベースにしたソロシート化。使い慣れた純正形状に手を加え、“見た目”と“実用性”を両立させる。鍵で着脱できる構造を維持することで、日常使いでも不便さを感じさせない工夫が光ります。乗り手の身体に自然と馴染む形状、必要最低限に削ぎ落とされたパッド、そして後方のラインが生み出すミリタリー感──W650のスリムなフレームと絶妙なバランスで合わさり、単なるソロではない“乗るための造形”になっています。
垂直にそびえる空冷ツインのシリンダー。この“腰上の建築美”こそ、W650がW650である所以。無駄なく、華美に走らず、それでいて芯がある──クラシックバイクの持つ静かな説得力が漂います。フロントフェンダーは、タイヤが深く入り込む形状へ変更することで、英国車風の雰囲気を演出。見た目だけでなく、泥はねの防止など実用性にも配慮。雨の中を走る覚悟が詰まった、日常で機能するカスタムです。
この一枚からは、クラシックとミリタリーが調和した思想がにじみ出ています。当初は「フレームごとマットグレーかマットグリーンに塗るか?」という大胆な構想もありましたが、クセが強くなりすぎる懸念から却下。代わりに、黒をベースとしながらキャンディーライムグリーンのタンク塗装で“カワサキらしさ”をさりげなく主張しています。リアフェンダーはFRP製でリブ付きデザインを採用し、実用とデザイン性を両立。マフラーはハーレー純正のサイレンサーを流用し、分厚い鉄が生む深みのある排気音がこのバイクに不思議としっくり馴染みます。軍用のようでいて過激すぎない絶妙なバランス──それがこの一台の魅力です。
一見して“雰囲気系カスタム”と思われがちなルックスですが、その足回りには妥協がありません。前後サスペンションにはハイパープロ製スプリングを導入し、見えない部分から走行性能を底上げ。キャブレターにはダイノジェットで再セッティングが施され、点火・燃料ともに最適化。クラシックなルックスに反して、実際にはかなり機敏な挙動を見せてくれます。“ちゃんと走るクラシック”という言葉がぴったりの一台で、古さを演出しながらも走行体験は現代的。見た目に酔い、走りで唸る──そんなW650のカスタム哲学が凝縮された側面です。
テールまわりは小ぶりながら存在感ある構成。テールライトには
ベーツタイプLED
を採用し、伝統的なフォルムに現代技術が融合。リアウインカーはフレックスLEDをナンバーサイドに貼り付けることで、視認性と省スペース化を両立。ナンバー灯にはボルト一体型を使い、無駄な突起のない仕上がりに。必要十分な機能を詰め込んだ構成で、あくまで“クラシックに徹する”という美学を貫いています。
メーターは人気の
motogadget motoscope tiny speedster
。羅針盤を思わせるクラシカルなデザインと精緻なフォントがW650の造形美に完璧に調和します。アナログテイストながら内部は完全デジタル制御。古き良き見た目に、現代の安心感と機能性が隠されている──そんな“ギャップのある魅力”を持ったメーターです。
ハンドルスイッチには、クラシックデザインと機能性を兼ねたHiGHSiDER製CNCボタンスイッチを選択。押し心地や配置にもこだわり、無理なく直感的な操作ができる設計になっています。ブレーキマスターシリンダーのリザーブタンクは高さ5mm削ってコンパクトに加工。ほんの数ミリでも「ハンドル周りの収まり」に直結するため、細部の詰め方がこの一台の完成度を物語ります。
このバイクは現車確認の当日に、そのまま嫁ぎ先が決まったという実績を持ちます。カスタムされたミリタリー風スタイルを探していたという新オーナーにとって、まさに“巡り合い”の一台。林道や沢にも臆せず突き進める信頼性と、日常に溶け込む機能美。見た目だけでは語り尽くせない、乗って初めてわかる“タフで無口な相棒”──それがこのW650です。
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